2014年11月29日土曜日

自閉症・知的障害とバイリンガル②ことばとコミュニケーション

自閉症関連でみえる方もいらっしゃるようなので、ずいぶん間が開きましたが、久々にこの話を。

私は臨床心理士でも言語聴覚士でもありません。
ただの幼児教室のせんせい、でしかないので;「あーそういう意見もあるんだね」ぐらいに聞き流してもらった方がいいかな、と思います。






自閉症・知的障害とバイリンガルについてお話する前に、まずは「ことばとコミュニケーション」についてお話します。


子どもの発達を考えるさい、ことばの発達と、コミュニケーション力の発達は、全く別領域であるということを理解しなければいけません。


例えば。
ここに、自閉症の女の子と、ことばの発達のみが遅れている(口周りの筋肉の発達が遅く、音が上手く作れない)男の子がいます。
どちらも2歳とします。

ハクション!とくしゃみをしたさい、男の子は辺りを見回し、ティッシュを探します。
見当たらなければ、ママの服をくいくい引っ張り、鼻を"指差します"。
「てぃっ、てぃっ」
「あ、ティッシュね」
「ん」

自閉症の女の子は、まず激しく泣きます(笑)
「どうしたの?」と声をかけても「あぁぁあぁぁ!!!!!」と泣き叫ぶばかり。
ママが顔を見て、ようやく「ああ、鼻水ね?」と察してやらなければいけません。


鼻水等、見てわかりやすいものならまだいい。


もうひとつの例を。
男の子は、キョロキョロ何かを探しています。
「何が欲しいの?」
「ぼ、ぼ」
「ぼ?」
「ぅちゃ、」
「ぅちゃ?ぼ?あぁ、ボトル?お茶のこと?のどが乾いたのね?」
彼はこくこく頷きます。

女の子は、まず騒ぎます(笑)
「何が欲しいの?」
「カシテ!(貸して)」
「なにを?」
「カシテ!!カシテ!!」
「のどが乾いたの?お茶?」
「・・・・カシテぇぇ!!」(癇癪)
この場合、具体的に「お茶」が提供されるまで、わめき散らします;

あるいは、オウム返しをするかもしれません。
「何が欲しいの?」
「ナニガホシイノ?」
「お茶?」
「オチャ?」
「違うの?」
「チガウノォ!!」(焦れて癇癪)

あるいは、伝えることができないので「自分が欲しいものが手に入る場面」を、ママに再生して見せるかもしれません。
ママの手を取り、冷蔵庫を開けさせようとします。
自閉症の「クレーン現象」です。



このように
・難聴(そもそも音が聞こえないので、同じ音を作ることが困難)
・構音障害(音声を作る器官に障害があり、音が上手く作れない)
・バイリンガル環境
によることばの遅れがある場合は、コミュニケーション能力はほぼ年相応です。
ことばがなくても、身振り手振りや表情で自分の意思を伝えることはできます。

一方、自閉傾向がある場合、コミュニケーション力は弱いため、上手く伝えることができずに癇癪を起こす頻度は高くなります。
(この場合は、絵カードを使って選ばせる等、視覚でのコミュニケーションが有効です。)


また、自閉傾向のある子たちは趣味が偏りがちで、他人の感情にあまり関心が持てません。
そもそも、コミュニケーションについて興味が薄いんです。(幼児期の場合)

「こんにちは」と話しかけたさい、ことばのみが遅れている子は、にこっと笑うかもしれません。
恥ずかしそうにママの後ろに隠れて、じっとあなたを見つめるかもしれません。
後ろを走るバスに気を取られていたので、再度「こんにちは」と話しかければ、「あ、いた」といった感じで目線をこちらに移すかもしれません。
いずれにせよ、少なくとも彼らの意識は「ここ」にあります。


自閉傾向があると「こんにちは」と話しかけても、彼らの目線は遠くを見つめています。
「こんにちは」
再度話しかければ、何か反応するかもしれません。
でも、彼らの意識はここにはありません。
目線は泳いで、自分の世界と私たちの世界を、何度も行き来します。


自閉傾向が"ない"子たちは、意識が周囲の世界に向けられているので、大人たちがことばでコミュニケーションを取っているのに自然と興味を持ち、ことばを教えるように話しかければ、自ら身につけていきます。
「あれは、ぶーぶー」
「ぶーぶー」
「これは、わんわん」
「ワンワン」
「かわいいねー」
「あ、ママ、ちょうちょ!」
ママを見上げ、みてみて、と"指差し"ます。


自閉傾向があると、
「あれは、ぶーぶー」
「・・・・」
「これは、ワンワン」
「・・・・」
「見て見て、かわいいねー」
「ママ、こうえん行きたい」
ことばがあったところで、全然コミュニケーションが取れない子たちも;
知的・言葉の遅れがない高機能自閉症、いわゆるアスペルガーの子たちです。
彼らは逆に、ものすごいおしゃべりである場合もあります。
でも会話にはなりません。
言いたいことをひたすら話し続けますが、こちらの問いには、しん・・・と驚くほど無反応か、強引に自分の話を続けます(笑)


3歳前、こんなに小さな頃から、すでにコミュニケーション力にこれほど違いがあることに驚きます。
自閉症の原因はまだ解明されていませんが、少なくとも「遺伝子」から来ていることはわかっています。
言い過ぎ、と言われるかもしれませんが---自閉傾向のある子が、傾向のない子のレベルのコミュニケーション力を望むことは、黒人が白人になろうとするぐらい「遺伝子レベルで難しい」んじゃない?と感じます。


もちろん、その後の養育環境によって、彼らが自分を肯定できるか・できないかは、大きく変わってきますが。



話が長くなってしまった!
つまり、自閉傾向の子たちの主な問題点はコミュニケーションであって、ことばそのものが問題、ではないんです。


最後に、幼児期のことばの発達について解説されたサイトをご紹介。
「うちの子は自閉症?」「うちの子、ことばが遅いんだけど…」と心配される方はご参考ください(^^)










2 件のコメント:

あちゃこ さんのコメント...

こんにちは。
あちゃこです。

我が家の子供たちも言葉には苦労させられました。
あ、今も苦労してますね(汗)

お兄ちゃんは入園頃で二語文がやっとでしたね。
意思が伝わらなければ癇癪を起こしましたが、それ以外は興味なければ静かなものでした。
人と関わる事に興味ないので他人の言葉が耳に入らない、言葉を覚えるという事に関心が無かったのかもと、今は思います。

弟の入園時は一語文メインでクレーンは多い子でしたが、癇癪はあまりなく意外と他人と接する事が出来る子供でした。
弟はお兄ちゃんと比べると多少他人を受け付けられる子でした。

自閉症の子供は自分の世界が強くて他人を受け付けない、受け付けないというより存在しないと言ったほうがいいかもしれませんね。
当時の子供たちの中では私の事、母親として認識してくれてたのかな・・・。
今では「おかあさ~ん」と甘えん坊に育ってます(笑)

小学三年生のお兄ちゃんは、日常会話はかなり出来る様になりましたが、やはりコミュニケーションに問題があるので、会話が噛み合わなくなってきますし、頭の中の想像が全部口からダダ漏れてて、独り言をブツブツ言う危ない人になりやしないか今から心配してます。
独り言を言い始めたら指摘してますが、直るかな・・・。

小学一年生の弟は、知的障害のせいか未だに二語文メインです。単語のバリエーションや言い回しは増えてきましたが、同世代の子供と比べるとまだまだですね。
言葉は遅いけど、いつかはそれなりの言語能力はついてくると思ってます・・・たぶん。

子供達とたくさんおしゃべりできるようになれたらいいな・・・。

ロブさん さんのコメント...

あちゃこさん>ほんと、子どもとおしゃべりできるようになるといいですよね・・・。
でもアスペ?な実母とは、生まれてこの方まともな会話が成立したことがないので、子どもらの話を一方的に聞くだけにはなるのかな、とは思っています(苦笑)それでも、自分のことを話してくれるようになればいいな、と思いますよね。

自閉症の子たちが自分の世界が強い、本当にそうですよね。
でもそれは長所にもなるんじゃないかな、とも考えています。

自閉傾向のない子らは、逆に自閉の子ほどひとつのことに集中はできないし、強い意見も持てない、彼らほど豊かなイマジネーションを持ちたくても限界があるんです。
その方が、「長いものには巻かれろ」で生き易いことは生き易いんでしょうけども^^;
「絶対!巻かれない!」自閉傾向の子らというか・・・(笑)
この話はまた大きい記事になるので、後日書こうと思っています☆

言葉は遅いこともありますし、通じないこともあるけれど、長所を生かしていってくれるといいですよね。